記憶 ―砂漠の花―
道行く商人は、私たち同様の砂避けの白いローブを身に纏い、馬を連れて歩いている。
そして、
すれ違う兵士たちは、アズに声を掛けていく。
「アズ様、体に気を付けて!」
「アズ様!帰ったら外の話聞かせてくれ。」
「あぁ!皆にもよろしくな。」
アズはそう覇気のある笑顔で手をあげた。
「ふふっ、アズったら人気者ねぇ~…」
「…うっさいな…」
ちょっと照れたアズは私の頭をクシャクシャとこね回した。
今のラルファは平和だ。
他の国は違うらしいが、王家と国民の距離が近い。
こうなったのも戦の後の話。
王家とはいえ、私が血が繋がらない拾われた子で、みんなも幼い私を通じて話しかけやすくなったっていうのもあるらしい。
あとは父上とアズの人柄ね。
「アズ様っ!!」
通りの向こうからアズの名を叫ぶ高い女性の声。
「エミリ…」
アズの元へ駆けてきた女性の名はエミリ。
どうやらアズに恋愛感情を抱いているらしい。
「明日行ってしまわれるんですって?!」
「あ、あぁ…」
「エミリは心配で心配で…もしアズ様の身に何かあったらと考えると…もぅ。」