記憶 ―砂漠の花―


ラオウは岩の入口が通れない為に、毎回オアシスの岩の外で待っているのだ。
毎回、後で文句を言われる。



突然、アズが大きな水音をたて、私のすぐ横の水面に現れた。


「――びっくりした…」

「泳ぎにくそうだね。それ脱いじゃえば?」

確かに、水をたっぷりと吸ったローブは重い。

でも、このローブの下は薄い生地一枚。
水に濡れて、体が透けて見えているに違いなかった。


「何を真顔でご冗談を…。曲がりなりにも一応女の子なんですけど?」

私が普段通り冗談めかしく対抗する。

でも…、

アズが普段通りじゃなかった。


「女の子ね…。うん、知ってるよ…?」


言い返される、批判されると思っていた言葉は、あっけなく肯定される。


「…知ってるよ。」

「アズ…?」


アズの熱く鋭い視線が私に刺さる。

いつもの優しい楽しい兄の姿はなく、いつになく真剣な眼差し。

険しい苦痛の表情とは裏腹に、
私の頬に触れる優しすぎる指先。


「……アズ…?」

いつもと様子の違う彼に再び呼び掛けたその時、

「ごめん…」

と呟き、
私を自分の胸へと引き寄せた。


私はアズに強く抱きしめられ、身動きが取れなくなる。

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