記憶 ―砂漠の花―


…なに…?

――何が、起こっているの?


アズの呼吸が、
私の髪に伝わる。
肌に触れる温かい体温。


――…ドクン。

私の心臓が飛び跳ねた。


髪から徐々に這う様に下りてくる温かな唇が…、

耳元へ――、
頬へ――、


そして、唇へ―――。


水に濡れて顔にかかる金色の髪の奥で、私を見つめる真剣な緑色の瞳。


「…ごめん…」

そう繰り返す熱っぽい吐息が、至近距離で私触れる。

そして、
また、唇へ――…


体が、動かない。

目の前にいるアズが兄でなく、一人の男性に見えた。


筋肉のついた私と違う体…。

私の頬を包み込む、
大きな手…。


ずっと一緒だったのに。
今まで、
こんな事なかったのに…。


瞳が、唇が、吐息が、
私に降り注ぐ。


「アイリ…」

私のこわばった指先がアズの声に誘われる様に、アズに触れようと前に出た。

アズの背中に回した私の手。
その指先が、アズに触れるか触れないか…

そんな時だった。



―――ガサッ…

葉のざわめきで私たちは我に返った。

反射的に音のした方向を見ると、キースがこの場から離れた後だった。

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