記憶 ―砂漠の花―
「キースだってぇ!?まさか…」
アズも驚きの表情は隠せずに、この事態に確信を持てずにいる。
「何でお前ら気が付いたんだ?」
人の姿をしたキースがこちらに歩み寄り、レンとラオウを交互に撫でた。
『だぁって臭いが、なぁ~?』
私を乗せたままのレンが、ラオウに向かって同意を求めた。
『あぁ…。お前、狼のくせして気安く撫でるなよっ!!次やったら蹴るぞっ!!』
『そっ、そうだぞ!踏むぞ!』
この様子に笑い転げる私に、アズは不思議そうに首を傾げた。
「アイリ。狼のキースが、この男なのか?」
「そうだよ?」
アズはキースと私に忙しく目を配らせた。
「狼を、人間に出来るのか…?」
「うん、私も多分出来るよ?」
「……そうなのか?」
ラルファには、ウィッチは残り少ない人数しかいない。
ウィッチ狩り後は、その力を人前で見せない傾向があったらしいので、実際にその力の大きさを知る者は若い世代にはあまり存在しない。
それを知る機会もない。
私も、魔力は使わないように生活してきた。
皆と同じ人間でありたかった。