記憶 ―砂漠の花―


「アズ~!助かったよ。」

私はそう言いながら駆け寄ると、アズの腕に絡み付く。

アズは「毎度の事だ」と呆れた様に、そして無事で居た私に安心した様に、ひとつ大きな溜め息を漏らした。


実は、砂嵐が来そうだからと私を止めるアズの言葉を、軽く受け流してやって来たのだ。


「バカ者が…」

「だって、平気だと思ったんだもん。」


「とりあえずカオスの泉まで行こう。ラオウを待たせてある。」

私の頭を軽くこづきながら、アズは足を進めた。


ラオウとは、アズの愛馬。
気性は荒いが真っ白なとても綺麗な馬で、国一番の脚力だと言われている。

しかし、
私とはあまり仲良くはない。
だから私は少し渋い顔。



アズの腕に張り付いたまま少し歩くと、ラオウの鳴き声がしてきた。
私は、泉まであとわずかの距離で倒れていた事に気付き舌打ちをした。


「惜しかった…あと5分、城を早く出ていれば…」

私の小さなぼやきを聞いてか、アズは私を咎める様に睨んでいた。

そして、ラオウの方に向きを変えると穏やかな顔をして彼を撫で始めた。


「よしよし、良い子にしてたか?」


―――ヒヒィ…ン…


そうラオウが鳴く。


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