記憶 ―砂漠の花―
1・砂漠の国 ラルファ

1・砂漠の国ラルファ



―――…砂。

いつもの、砂漠。


私は、砂に埋もれた体を半分起こした。

碧い空には白い月。
向こうの微かなオレンジの空で、陽が沈んでいく様子を呆然と見ていた。
もうすぐ、夜が訪れる。


「……ぁ…」

カオスの泉に水浴びに行くと城を出たのが昼過ぎ。

途中でまさかの砂嵐にあった。
まだ生きている事からみて、砂嵐は大した規模ではなかったらしい。

やっと自分のおかれた困った状況を把握した。


砂漠に風が吹く。
砂の動く音しかしない。

身にまとった白いローブの隙間から肌に伝わる気温。
昼の暑さから一転した涼しさに鳥肌が立つ。


「…ん~、どうしようかな…。」

一人ぼそっと呟いた瞬間、


―――ザッ…


「……!」

砂が舞う壁の向こう側で、影が揺れるのを見た気がした。


……けもの!?

一瞬にして体が凍りつく。
私は用心深く立ち上がると目を凝らした。


「――…?」

声がする…
違う、あれは、


「アズ!!」

ほっ…と安堵が広がり、私の緊張が解ける。


「…アイリ、やっと見つけた!大丈夫か!?」

そう言いながら砂の向こうから現れたのは、兄のアズだった。


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