記憶 ―砂漠の花―


「知らなかったわ~…。以後気をつけます。…さぁ、出てって!」

私は部屋の入り口を指差した。


「…全っ然、気を付けてないじゃん。まぁいいさ。明日からじっくり、俺の良さを分かってもらいましょう。本当の俺を知ったら、アイリ目ぇハートになっちゃうぜ~?」

自信満々にアランは目を細めた。

すでに勝ち誇って、一人でちょっと違う世界にいっている。


「へぇ~…、あまり期待しないでね…」

ベッドに腰掛けたアランは、私を見てニコニコしている。

「…………。」

無言のまま、とてつもなくニコニコしている。

何か、
今の会話に不自然を感じる。


「……明日から?じっくり…?」

そう、
その言葉辺りがおかしかった。

私は体の動きを止めたまま、今の会話を思い出そうと脳は回転させ、口だけ動かしてアランに問う。


「明日からじっくりって何よ…。」

「うふふ。じゃあ、僕も明日早いから寝るね?」

アランは私が驚いた事に満足そうに、手を振って部屋から出ていった。

花の香りだけがこの場に残る。


何かの間違いよね…。
これ以上悩みを増やさないで?

この私の願いを、神は叶えてくれなかった。

神様なんて、
きっと、いないんだ。

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