記憶 ―砂漠の花―
「別にそんなんじゃないわよ。」
私はレンの顔を叩く。
『痛~い。そんなんじゃ…って、アズがアイリの事好きなのは前々から知ってたし…』
「――なんで知ってんの!?」
『動物的カンっ!!』
「あぁ、そう…」
それは、あてにならないわ。
偶然ね…。
『んでも当たってたじゃん!僕の動物的カンだと、アイリもアズの事好きだと思うんだけどなぁ~…』
「うるさい、レン!あんた晩御飯抜き!」
急に大きな声を出したので、別の話をしていた二人も驚いてこちらに注目した。
「あ…。いや…」
『アイリ、ひど~い。でも図星なんじゃ~ん。』
「レン!」
アズにはレンの言葉は届かないにも関わらず、アズの耳に入るのを私は恐れていた。
『図星だからってアイリが怒る~!僕、拗ねてやる~…』
「あ~…レン…」
レンは少し離れた場所でふて腐れて寝始めた。
「どうしたんだ?」
アズが一見、一人で怒り出した私と、それに恐れをなして逃げていった馬を見て心配そうに聞いたが、
「な、なんでもないよ…?」
と、答えるしかなかった。
図星かどうかなんて私にも分からない。
レンの言葉が分かるキースだけは、声を殺して笑っていた。