記憶 ―砂漠の花―

「別にそんなんじゃないわよ。」

私はレンの顔を叩く。


『痛~い。そんなんじゃ…って、アズがアイリの事好きなのは前々から知ってたし…』

「――なんで知ってんの!?」

『動物的カンっ!!』

「あぁ、そう…」

それは、あてにならないわ。
偶然ね…。


『んでも当たってたじゃん!僕の動物的カンだと、アイリもアズの事好きだと思うんだけどなぁ~…』

「うるさい、レン!あんた晩御飯抜き!」

急に大きな声を出したので、別の話をしていた二人も驚いてこちらに注目した。

「あ…。いや…」


『アイリ、ひど~い。でも図星なんじゃ~ん。』

「レン!」

アズにはレンの言葉は届かないにも関わらず、アズの耳に入るのを私は恐れていた。


『図星だからってアイリが怒る~!僕、拗ねてやる~…』

「あ~…レン…」

レンは少し離れた場所でふて腐れて寝始めた。


「どうしたんだ?」

アズが一見、一人で怒り出した私と、それに恐れをなして逃げていった馬を見て心配そうに聞いたが、

「な、なんでもないよ…?」

と、答えるしかなかった。


図星かどうかなんて私にも分からない。

レンの言葉が分かるキースだけは、声を殺して笑っていた。

< 81 / 283 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop