記憶 ―砂漠の花―

「そうよ!さすがに聞こえないからねっ!」

「…怖いなぁ。でも怒ったアイリも可愛いよ。」

アランはそう言うと、予想通り抱きついてくる。


『可愛い』…、
アズに言われて跳ねあがった言葉も、アランに言われると何とも思わない。


「ちょっっとぉ!ベタベタしないでよぉ!」

「いいじゃん~。今日なんかラオウと偵察に行かされて、アイリとのスキンシップの時間が…」

「……ぁ!」


『ラオウ』という言葉を聞き、私はハッとする。


「ラオウ、レン!無事!?」

私は、自分の腰に巻き付けていた布袋の中を覗いた。

そこには、
小さい二頭の姿。


『無事?じゃねぇっ!落ち着いたんなら早く出せよ!空気薄いんだよ!』

『アイリ~、超怖かったね!アイツ。岩ズドーンて、ね!』


「あぁ無事ね?良かった~。とっさに小さくして正解ねっ。」

中で暴れる二頭の馬たち。


『早く出せよ!元に戻せよ!』

『僕、初めてちっちゃくなった!感動~。』

普段と変わらない彼らに、安心した。


「もう少し落ち着くまで、それでいて?」

『あぁ~!?』
『僕、いいよ~!』

ラオウの批判を浴びながらも、袋の蓋を軽く閉める。

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