Raindrop
じっと見つめていると、それに気づいた水琴さんが微笑み返してくれた。

やっぱり、いつも通りの笑顔。

気まずい思いをしているのは僕だけなのだろうか……と、楽譜に視線を落とすフリをしてその笑顔から逃げた。


「パートの振り分けは少し迷ったのだけど……ファーストが和音くん、セカンドが花音ちゃん、拓斗くんがチェロね。チェロ、弾けるのよね?」

と、拓斗に確認を取る。

「はい、弾くだけなら、ですけど」

「それで十分です。きっとこれがベストだと思うの。みんな、ピアノでは弾いたことあるわよね? これはヴァイオリンで弾きやすいようにニ長調に変調してあるから、少し戸惑うところがあるかもしれないけれど、みんなのレベルなら初見で大丈夫……ね?」

僕たちを伺うように、小首を傾げる水琴さん。

「ええ、問題ありません」

ざっと譜面を見渡したけれど、これなら小学生レベルだ。随分と簡単にアレンジしてある。

「はい、大丈夫です」

拓斗も頷いた。

「え、と……ちょっと、待ってくださいっ……」

頬を膨らませたまま、花音は楽譜と睨めっこ。

その間に拓斗は練習室からチェロを運んできて、僕と水琴さんは譜面台と椅子を4人分用意。

30分後にはそれぞれが椅子に座り、演奏の準備は整った。

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