霞を散らす風のごとく
しかし、思っていたよりも壁に近い位置に立っていたようだ。
「っ……!」
壁に背中がぶつかる。
逃げ出そうとするが、愛緋の顔の両側にはすでに祥貴の腕が置かれており、逃げ場はない状態だった。
近づいてくる祥貴の顔を直視できなくて、顔を背けると祥貴が愛緋の首筋に顔を寄せてきた。
祥貴の唇が肌に触れるか触れないかの場所で止まる。
首筋に息がかかり、愛緋は足に力が入らなくなってふらついていた。