デュッセルドルフの針金師たち前編
第6章デュッセルに移住

中華レストラン金都(きんど)

外国に来て日本人村にどっぷりとはまっていると
語学も上達しないし、日本にいるのとちっとも変わらない。
何のための一人旅だったのかと非常に心が空虚になる。

春になったら旅に出よう。とにかくコペンを出よう。
一人旅でまた再出発だ。辛抱辛抱・・・・・。

少しずつ日が長くなり、とうとう春がやってきた。
ところが、マメタンの顔が最近とみに元気がない。
オサムは心を見透かされたのかなと思いつつ、

「なにかあるの?」
と聞いてみた。そしたらやはり何かあった。
前の彼氏が彼女に会いに来るという。

『なんじゃそれは?すごい奴だなそいつは、
俺なんか負けそう。何とかしなけりゃ、そいつ
無理心中でもやりかねないかも?』

そこでオサムは神の如く厳かに啓示をたれた。

「会ってあげなさい。思い切り諭してあげなさい。
私は一足先にドイツへと下って、デュッセルドルフ
あたりで職を探しておきます。連絡を密にしましょう。

態勢が整えば是非ドイツで一緒に暮らしましょう。
東京からの元彼には絶対に会っておあげなさい。時間
はいくらかかってもいい。我々二人はしばらく離れ離

れになりますが、お互いに努力しましょう。愛があれば、
二人に宿命的な愛があれば、また必ず結ばれるはずです。
誰人も不幸にしてはいけません。是非、ストックホルム
まで行って、昔の彼に会っておあげなさい。正直に素直

に自分の気持ちを伝えなさい。彼も成長しているはずです。
ひょっとしたら、今のあなた以上に成長しているかもしれ
ません。その時はその時です。ともにまだまだ若いのです。

悔いを残すなこの人生!!・・・・・アーメン」
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