デュッセルドルフの針金師たち前編
ある晩、気が付いたら十字路にパトカー、
いつものワーゲンパトがさりげなく止ま
っているではないか。大急ぎでたたんだ

が間に合わなかった。近くに止まっていた
車の下に放り込んだかばん、よせばいいの
に誰かがポリスに指差している。石畳の

向こうでじっと見つめていると、とうとう
しゃがみ込んでかばんを持って行かれてし
まった。さあどうしよう?よれよれの話では

罰金を払わなかったら刑務所行きだそうだ。
初めてならそうきつくはない、せいぜい100
マルクくらいだろうとのこと。

オサムはポリスを追いかけて警察署まで行く
ことにした。現行犯で何人かが捕まっている。
駐車場から取調室に行くまでの間にあのワー

ゲンパトを見つけた。助手席に我がかばんを
見つけた。作品と布がはみ出したままポンと
置かれている。脇にいた若いポリスマンに、

「これはわたしのだ。返してくれ」
とまじめな顔をしていったら。
「あいよ」
という感じですぐに返してくれた。

両手でかばんを受け取ると、すぐさま、
オサムは足早にその場を去った。

今晩何故そうなったのかよく考えてみよう。
今日の一番角はあのマリファナドイツ人で、
その彼が見張りを怠ったのが原因なのだ。

それだけ一番かどの見張りの責任は重い。
なんということだ!次の日、石松や縁日と
相談してオサムは一番角を取る決心をした。

夕方かなり早めに一番かどの上にかばんを
置いて、常連が来るのを待った。
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