デュッセルドルフの針金師たち前編
さらに次の日、ユースも危ないとかで皆も
それとなく武装して緊張していた。
そして三日目、何も起きなかった。

もうものすごい人で毎日20万近い売り上げだ。
まさかこんなすごい人ごみの中では殴りこみもない
だろう。ポリスカーもこの三日間一度も来ない。

あまりの人の多さで車道も人であふれは入れないのだ。
売って売って売りまくろう、ダンボールもだいぶ片付
いてそのひと箱は一杯のマルク札だ。200万円以上は

あるだろう。イブに3000マルクの大売りを出して、
いよいよ最後の一日、クリスマスの当日だ。在庫一掃
山済み販売。さあラストだよ。メリークリスマス!

宴たけなわ午後11時頃、アルトは群衆で身動きでき
ないほどだ。ところがまさかのまさかのこの時に、
いきなり右のフランス人のほうから人が飛び込んできた

かと思うと、人垣が大きく二手三手と分かれ、こんどは
左手から石松が吹っ飛んできた。
「にげろ!なぐりこみやーっ!」

石松はめがねを吹き飛ばされ顔面に血しぶきがついていた。
オサムはとっさにワンタッチでたたんで全力で走った。
数十メートル走って、

『あっ、マメタン!』
かばんをその場に置いてすぐに引き返した。
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