追憶 ―混血の伝道師―
僕は用務員室を訪れた。
構内の端に位置し、薄汚れた白っぽい壁には、グルグルと弦の葉が繁っている。
僕にとっては茶のみ友達がいる馴染みの場所だ。
周辺には花壇が多く、花などの観賞用の植物は勿論のこと、彼の趣味で野菜や果実までも実っている。
穏やかさが取り柄のその場所が、想像通り珍しく喧騒に包まれていた。
「――だから言ったじゃないすか!?只でさえ年季が入ってんだから、設備の予算ケチってくれんなって!!」
茶のみ友達が、沢山の年配者に囲まれても臆する事なく声を荒げていた。
教授の何人かや学部長、大学の経営陣までその場に居た。
やはり設備不備のようだ。
「どうすんすかっ!?俺が直せるレベルじゃないっすよ!?」
――バンバンッ。
用務員室の隣に併設してある設備小屋の戸を叩いている音だ。
「何とかならんのかね」
「――ならんですよっ!!」
僕の茶のみ友達。
数名居る用務員の中でも1番のスキルと行動力を持ち、若くして年配者たちをまとめているリーダーだ。
性格上でも素質がある。
学部長や経営陣にまで決して態度を曲げない彼の姿は、見ていてヒヤヒヤもするが、清々しく気持ちが良い。