追憶 ―混血の伝道師―
「専門の業者を呼びましたけど、状況を見る限りは、今日は無理でしょうね。」
「…仕方ない」
「やはり全講義が休講か…」
彼の言葉を聞いて、年配者たちはブツブツと今後の相談を始めながら、1人また1人と、この場を離れていった。
遠巻きに様子を見ていた僕は、彼らとすれ違う度に会釈を繰り返す。
そんな僕に気付いた茶のみ友達が、物凄い勢いで叫び声をあげながら、片手のランプを揺らして近付いて来た。
「――…ミハル先生ぇーっ!!」
「…大変みたいだね」
「そうなんだよ!!せっかく来てくれたのに、今日は茶を沸かすガスすら出やしねぇや。」
「どうしたの」
僕は設備小屋を顎で指した。
胸に居たコンは地面に下りると、ちょこちょこ歩き出し、設備小屋の戸を見上げていた。
「…ガスの供給装置自体がぶっ壊れた。まぁ…ちょっと見てよ、ミハル先生。」
彼は片手に持っていた鍵で器用に戸を開けると、僕たちを設備小屋の内部に招き入れた。
少しカビ臭い、
ヒヤッとした空気。
彼のランプが奥を照らすと、それらしき機械が何の音もたてずに静かにただそこに在った。
「業者が来たところで、大掛かりな修理になりそうだから、しばらくは…」