キス魔なあいつ




誰でも良かった。

だから誰か、悠以外の人とのキスを知りたかった。

そうすれば、もっと悠の気持ちが分かるんじゃないかって。

実際に、いろんな人とキスをする悠の気持ちを。


今日の悠への告白風景が、頭を過ってしまったのだ。

悠は、あの時、どんな気持ちだったのだろうと。


「最低ね…」


あたしは、家に真っ直ぐ帰ろうと、歩を進める。

もう、買い物に行くような気分ではない。



あたしは、純粋に好意を寄せ、それを必死に伝えてくれた男の子を、自分のために“利用”したのだ。


ただ、悠の気持ちが知りたかった。

それだけの理由で。




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