僕らはみんな、生きている。
「なんだよもう……」

「ねえ、どこに行きたい?」

「そうだなぁ。ちょっとバイクでどっか行くか」

 声のトーンに張りがあって、顔色もいい。
 元気そうだ。

 どこでもいいよ。
 秀司といっしょならどこでもいいよ。

 秀司のバイクに乗るの、何ヶ月ぶりだろう。

 バイクが走りだす。
 風が吹き抜けて、景色が後ろへ流れていく。

 どこに行くのかわからないけど、私の胸は高鳴っていた。

 ね、秀司。夜明けはちゃんと来たでしょ。
 
 空は青く、雲ひとつない。海を反射させたかのように澄みわたっていた。

 心だって同じようなもの。
 いつまでも夜のままじゃない。

END
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