触れて、撫でて【密フェチ】
触れて、撫でて

真っ白でさらさらの絹のような手触り。
その体毛を、蒼白くて細く長い指が優しく梳く。



「ホント、エド君の毛並み、凄いですよね」


他に客がいない店内で待っていた私に、エドを抱いた若い男性が近づいてくる。

「僕も休憩にしちゃいます」

そう言って、彼はテーブルの向こう側に座った。

この店がオープンして数ヶ月。
女性客が途絶えることがないから、こうして二人で向き合うのは初めてだった。

若く、モデルのような容姿のオーナーは、人柄も優しくて穏やかで、犬にも飼い主にも人気がある。


「うち、ショーに出てる子も来るけど、エド君ほど凄い子はいませんよ」

「本当? だったら嬉しいな」

「ホントですよ。この、なんていうか、一本一本詰まってるっていうか」


エドの背中に指がすっと入って、真っ白な毛の間から覗く。

形のいい爪は短く切り揃えられ、関節も目立たない、細く、長い、綺麗な指。




その仕草に見蕩れていたら、エドが急に膝から飛び降りて、テーブルの下に潜り込んでしまった。

「エド?」

下を覗き込んだ私は、頭に冷たい滴りを感じて小さな悲鳴をあげた。


「うわぁ、ごめんなさい!」


声の主がすぐ横にいて、驚くほど近くに彼の指が見えたと思ったらそれが私の髪に触れる。 


彼が立ち上がった拍子にコップが倒れたらしい。

あまりの至近距離で、動けなくて固まってる私に、彼は「乾かしますから」とトリミングルームを指差した。



エドを室内ランに放って、鏡の前に座った私の髪に、その指が触れる。

黒髪の間から覗く指を見て、思わず、ぎゅっと手を握った。

だって、触れ方が凄くゆっくりになったから。


「ああ、思った通り」


鏡の中で、彼は見た事もないような笑みを浮かべてて。


「奥さんの髪、シルキーで素敵だ」


髪を梳いた指が地肌に触れて、ぞくりと背筋が震える。


少しドライヤーをかけただけで髪はすぐ乾いたのだけど。

その髪に触れたまま、彼が呟く。


「ごめんなさい」


「え?」


「本当は、わざとやったんです」


その指が頬に触れる。
すべすべでしっとりと、吸い付くような感触の指。


「今日、お客さん居ないの、変でしょう?」


もう片方の手が私の手に重なる。


「臨時でお休みにしたんですよ」


這うように滑らかに、私の手を握る指。


「エド君を撫でるの、いつも見てたんです」


そして、ずっと、この手に触れたかったのだと囁いた。



自分の指に絡められる長い指を見つめながら、思う。



――ああ、私と同じ事、考えてたのね。













Fin


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