チョコレートトラップ
「高橋、くん……」


せっかく初めて

名前を口にしたというのに、

キャンキャン鳴く

図々しい後輩に遮られるなんて。


私の口から自然と

深く大きな溜め息が漏れた。


「まぁまぁ、芹菜。

 気にするな。

 まだこれで今日が

 終わったワケじゃないんだし」


私の肩を優しく撫でる

凛を見て、

思わず目が潤んでくる。


「もうムリだよー。

 今だってすっごい

 勇気出したのに」


「じゃあ、バッグに入ってる

 チョコはどうするの?

 捨てちゃう?」


せっかく想いを込めて

用意した高橋くんへのチョコ。


このまま泣き寝入り、

なんてことでもいいのだろうか。


私は凛を真っ直ぐ見つめて

首を横に振った。





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