ユアサ先輩とキス・アラモード
『フーンダッ!』と小さく毒づけば、ようやく着替えだした。
 五分で着替えると、メールをチェックした。友紀からも花からもメールは来ていなかった。射場に入ると、真ん中に人だかりができていた。近づいてみれば、準備のため早く来ていた一年生だけでなく、新部長で二年生の横尾祐太と、新副部長の湯浅がいた。二人は真剣な顔でみんなと話している。真帆は近づくと、二人の話に耳を澄ませた。
「それにしても、このタイミングで骨折したのはまずいな。新人戦まで一か月を切っているのに」
「すいません。油断していました」
(あれ?友紀ちゃんだ。今来たのかな?……って、もしかして骨折した?)
「すいませんですまないでしょ。出場どころか練習もできないじゃない。いったい何考えているの?」
樹里のキツい一言が飛ぶ。真帆はムカッとした。
「まあまあ、木吉。本人達も反省しているんだ、そう責め立てるな」
横尾が優しく言った。
(『本人達?』骨折したの、友紀ちゃんだけじゃないの?)
「でも、自覚がなさすぎます。こんなんじゃ、他のメンバーに示しがつきません。バカとしか言いようがありません!」
「木吉、言い過ぎだ」
「部長は甘すぎるんです。せっかく先輩たちが色んなものを築いて私達に渡してくれたのに、このままじゃ泥を塗りかねません。放っておけるわけがありません」
樹里は追撃をやめる気配がない。このままでは『死んでしまえ』とでも言いそうだ。
(はらたつー!一年の分際で、そこまで言う事ないでしょ!あーもう、こうなったら私が言ってやる。友紀ちゃんの様子も気になるし。中心へ突撃だ)
つっこもうと人と人の間に手を入れたとたん、湯浅が言った。
「とにかく、このままでは団体戦に出場できない。池間、立木は今回出場を見送って、代わりの部員を出そう」
(何ですと!)
真帆は驚いて突撃をやめた。
「何ですって!」
樹里がヒステリックに叫んだ。

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