溶ける彼女

小型冷蔵庫から顔を出して、彼女は男の子に微笑んだ。

「ママの初恋の人」
「パパじゃないの?」
「残念、パパは二番目なの」

男の子は興味を失ったのか、足元の絵本を読み始めた。

――どうして貴方はなくなるの。
彼女はまだ幼い息子を見つめながら、心の中で呟いた。

溶ける体質の母親と普通の体質の父親の間に生まれたのに、貴方は何故なくなる体質に生まれてしまったの。

言いようのない悲しみや怒りが、彼女の心を支配する。

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