クランベールに行ってきます
ひとしきり笑った後で、結衣はロイドに声をかけた。
「ねぇ」
「何だ」
ロイドはまだ半分ケンカ腰に返事をする。結衣は苦笑しながら問いかけた。
「こんな薄暗いところで何してたの?」
途端にロイドの口調は暗く沈む。
「別に……。そいつを直した後、ぼんやり考えてた」
「何を?」
「どうして一日は、二十四時間しかないんだろうと」
「は?」
一瞬からかわれたのかと思って、結衣は眉をひそめた。しかし、ロイドの深刻そうな表情から、そうでない事はすぐにわかった。ロイドは少し俯いて話を続ける。
「ローザンに調べて貰った結果から、あまり時間がない事が分かった。あいつには感謝している。あいつが遺跡の事を指摘してくれなかったら、オレは今も見当違いな事をしていたかもしれない」
「でもまだ王子様が異世界に飛ばされたって、決まった訳じゃないんでしょ?」
「あぁ。だが可能性が高い上に期間が限られている以上、優先する必要がある。遺跡の同期間隔は三十時間だとわかった。明日十四時に最初の同期が取れる。それには、どうしたって間に合わない。それ以降、活動期が終わるまでに十六回しかない。おまけに稼働時間は最短で十秒だ」
ロイドは俯いたまま、額に手を当てた。
「考えなきゃならない事や、やらなきゃならない事が山積しているのに、何から手をつけたらいいのか、頭が働かない」
何をどうやって、異世界に行ってしまった王子を捜そうとしているのか、結衣には見当もつかない。だが、いつもは強気で自信満々のロイドが、気弱になっているところを見ると、大変な労力が必要なのだろう。
おまけにおそらく、これまで通りの捜索も同時に行わなければならないはずだ。何も手伝う事ができないのが、ひどくもどかしかった。