クランベールに行ってきます


 せめて少しでも気持ちを楽にしてあげようと、努めて明るく話しかけた。

「じゃあ、頭が働くように甘いもの食べる? 明日、さっきのお礼も兼ねてケーキを作ってあげる。何がいい?」

 ロイドは顔を上げ、少し笑みを浮かべて答えた。

「今朝の奴」
「わかった。シュークリーム二十個ね。とりあえず今は、甘いお茶を淹れてあげる」

 結衣が背中を向けてお茶を淹れに行こうとすると、後ろでロイドがつぶやいた。

「なるほど」

 そう言いながらロイドは、振り返ろうとした結衣の手首を掴んで引き寄せた。後ろへ引かれバランスを崩した結衣は、フラつきながら二、三歩後ずさり、そのままロイドのひざの上に尻餅をついた。

「ちょっと、何なの!」

 わめきながら立ち上がろうとする結衣を、ロイドは片手で捕まえて、もう片方の手でメガネを外しながら顔を覗き込んだ。

「確かに、エネルギーの補給は必要だ」
「何、メガネ外してるの! だから、ゲロ甘茶を淹れてあげるって言ってるでしょ?」

 メガネを外したという事は、キスが来る。そう思った途端、結衣の鼓動は早くなる。やはり冷静でいられない。
 ロイドはメガネを机の上に置くと、もがく結衣を両腕で抱きすくめた。

「そんなものより、おまえの唇の方が何倍も甘い」

 歯が浮くようなセリフに結衣が硬直した隙を突いて、ロイドは素早く口づけた。
 唇に伝わるロイドの感触に、結衣の鼓動は益々高鳴る。
 少しの間、結衣の唇を味わうと、ロイドは顔を離してニッと笑った。

「エネルギー充填、百二十パーセントだ」

 百二十パーセントって、溢れてると思う。心の中でツッコミを入れながら、結衣は身体を突き放すと、ロイドを軽く睨んだ。

「バカ……! 人が来たらどうするのよ」
「おまえが言ってた、殿下との禁断の恋か?」

 ロイドは少し声を上げて笑った。そして、目を伏せると、皮肉な笑みを浮かべ投げやりに言う。

「それで投獄されるなら、その方がいい」

 なんだか様子がおかしい。


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