クランベールに行ってきます


「ロイド?」

 探るように見つめると、ロイドはいきなり荒々しく結衣を抱きしめた。

「無能な学者として投獄されるより、遙かにマシだ」

 そう言ってロイドは、再び口づけた。
 らしからぬ言動、投獄って何? 訊きたい事は色々あるのに、きつく抱きしめられていて逃れられない。叩きつけるような激しい感情とキスに、軽い恐怖と目眩のようなものを感じる。

「……やっ……!」

 ようやく少し顔を背ける事に成功し、話しかけようとしたが、ロイドはそれを許さなかった。

「まだだ」

 頭に手を添え、抱きしめる腕に力を加えると、更に深く口づける。
 今までにない激しく濃厚で長い口づけが、次第に結衣の全身から力を奪い、身体の芯が痺れてくるような感覚を覚えた。

 しばらくして解放された時には、まるで熱に浮かされたように、頭の中は真っ白で、目の焦点は合わないほど、結衣の意識は朦朧としていた。実際に全身が熱い。
 すっかり放心しきった結衣の耳元で、ロイドが囁いた。

「感じたのか?」

 その声にハッとして我に返った結衣は、思い切りロイドを突き放した。

「違うわよ!」

 否定したものの、本当のところはよくわからない。頬を膨らませる結衣を見て、ロイドはおもしろそうにクスクス笑う。


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