クランベールに行ってきます


「細分化して書いてあるだけで、大きく分けたら二つだ。これまでの作業で今後も継続するものと、今後新たに行うものだ。新たに行うものは装置の改造が主だからオレがやるしかないが、継続作業の方はローザンに手伝って貰うつもりだ」

 ローザンはこれまで、人捜しマシンの誤動作の原因を探るため、マシンの稼働ログや検索結果データの解析を行っていた。
 指定していないのに結衣を転送してしまった原因を探るためだったが、結衣が現れたのはマシンによる転送ではなく、遺跡の装置によるものである可能性が高い。

 現時点でローザンの解析結果から転送機能のバグは発見されていないし、ロイドによるマシンそのものの調査からも不具合は発見されていない。
 この事実から転送機能にバグはないものと結論し、データ解析は打ち切る事とした。
 手空きになったローザンは、今までロイドが行っていた捜索隊の捜索結果と機能縮小版マシンの捜索結果確認等を行う事になるらしい。

「あなたは何するの?」
「正規版装置の改造だ。異世界検索対応に変更する」

 平然と答えるロイドに、結衣は目を丸くする。

「そんな事できるの?」
「遺跡の同期時に検索かければ、可能な事は実証されている」
「実証?」

 いつの間に調べたのだろうと不思議に思って結衣が首を傾げると、ロイドはまっすぐ見つめてあごをしゃくった。

「おまえだ」
「え?」
「おまえが現れた時の検索結果に、この世界にはありえない位置座標が記録されている。しかも装置はそれをエラーとして処理していない。装置の誤動作はこの部分かな」

 人捜しマシンは元々、検索対象範囲がクランベール大陸全土をカバーする範囲に限定されている。それ以外の範囲を指定すればエラーとなり検索は行われない。
 特に範囲指定がない場合、大陸全土が検索対象となり、それ以外の範囲は検索しないので、記録に残る事自体おかしいのだ。

「その誤動作は放置して大丈夫なの?」
「かまわない。異世界対応に当たって、範囲の限定は解除する。問題なのはそれに伴う処理速度の低下だ。範囲が広がれば、それだけ検索に時間がかかる。異世界が検索可能な時間は十秒だ。ソフト、ハード共に高速化が必要になる」


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