クランベールに行ってきます


 人捜しマシンの起動停止時刻や、検索中の検索終了地域の座標や所要時間等の検索状況、エラーが発生した場合のメッセージやエラーの状態などは、接続されているメインコンピュータにログファイルとして出力される。

 言われた通り、ローザンが画面にログを表示すると、ロイドはそれを後ろから覗き込み、二人で検索結果の検証が始まった。
 見ていてもよくわからないので、結衣はその場を離れ、お茶を淹れるために給湯コーナーへ向かった。

 異世界の検索は予想以上に困難を極めていた。これで二回失敗したことになる。
 失敗しているので、対象範囲の規模が把握しきれていないという。
 七つの遺跡がいくつの異世界に通じているのか、あるいは通じていないものもあるのか、わかっていない。最多でこの世界も併せて八つの世界を検索しなければならない事になる。
 それだけで大変そうだということだけ、結衣にもわかった。

 ロイドは相変わらず、夜遅くまで研究室に詰めている。いつも忙しそうにしているので、結衣は関係ないことを話しかける事ができずにいた。
 勢いでうっかり告白してしまった事が、ロイドを余計に追い詰めてしまったような気がしてならない。

 最初は聞こえていないのかと思ったが、あの言葉はどう考えても聞こえていたとしか思えない。あの言葉の真意を確かめたいのに、あの言葉が歯止めとなって、ロイドに話しかけにくくなっていた。
 最初の異世界検索が中止になった夜、ロイドが最後に残した言葉。

——オレなんか、好きになるな

 ロイドを好きになったら、言う事を聞かない結衣は、日本に帰らないと言い出すかもしれない。現に王子が見つからなかったら、一緒に逃げると言っている。それを承諾したのは、結衣を安心させるためだろう。


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