クランベールに行ってきます
ロイドの中では、結衣を日本に帰す事は、揺るぎない決定事項となっているようだ。昨日の実験からもそれは明らかだ。
人捜しマシンの転送機能を拡張して、逆転送可能にする事は、ロイドにとって簡単な事だったようだ。すでにその機能は完成していて、昨日テストが行われた。
ロイドはローザンに操作方法を教え、自らの身をもって実験を行った。
研究室から科学技術局へ自分自身を転送してもらい、以前連絡のあった局長の仕事をこなし、局員に渇を入れ、三十分後にローザンの手により、研究室に転送されて帰ってきた。
実験の成功にローザンは酷く興奮していたが、ロイドは平然としていた。元々、確実に成功するという自信があったのだろう。
結衣を日本に帰す準備はすでに整ったという事だ。
結衣は自分がどうしたいのか、よくわからなかった。
日本には帰りたいと思う。
クランベールにやってきて今日で十五日目だ。盆も夏期休暇もすでに終わっている。
何の連絡もなく、エアコンも付けっぱなしで、部屋から忽然と姿を消していたら、親も会社も心配しているはずだ。
けれど日本に帰ってしまえば、ロイドとはもう二度と会えないかもしれない。
遺跡の活動期を利用すれば、三十年後には会える。それ以前にロイドが作ろうとしている時空移動装置が完成すれば、もっと早く会えるだろう。
しかしロイドが、そうまでして自分に会いたいと思ってくれるかどうかは、わからない。そして何より、その事でロイドを自分に縛り付けたくはなかった。
日本に帰るつもりなら、ロイドが言ったように、これ以上彼を好きにならない方がいいのかもしれない。だけど……。