クランベールに行ってきます
結衣が今まで言葉を交わした一番エライ人は、せいぜい取引先の社長が関の山だ。
「ど、どうしよう。王様に話すような敬語なんてわからないわよ。あなた何て言ってたっけ。おこがましい? そんな言葉、生まれて今まで使った事ないし……」
頭をかかえて、うろたえる結衣を横目で見下ろして、ロイドは呆れたように嘆息した。
「ったく。変に敬語を使おうとするな。おまえのような庶民は丁寧語で充分だ。タメ口きかなきゃそれでいい」
それを聞いて結衣は少しホッとした。
国王ではなく取引先の社長だと思えばいい。
「奥の扉が閉じるまで黙ってろ」
そう言ってロイドは歩くスピードを上げた。