クランベールに行ってきます
何も覚えてない以上、彼に聞いてみるのが手っ取り早い。
結衣は意を決して口を開いた。
「どうして一緒に寝ているの?」
するとロイドは不愉快そうに言う。
「オレのベッドにオレが寝て何が悪い」
「そうじゃなくて、私、ゆうべ……」
「ゆうべ?」
結衣が言い淀んでいると、ロイドはニヤリと笑い、顔を近づけて囁いた。
「最高だったぞ」
「さ、最高……? って……最低じゃない……私、何も覚えてない……」
目を見開いてロイドを見つめたまま、結衣は泣きそうな顔でつぶやいた。
少しの間、その様子をおもしろそうに見つめていたロイドは、突然吹き出した。そして、仰向けに転がって、大声で笑う。
「何がおかしいのよ!」
結衣がムッとして横から小突くと、ロイドはこちらに向いて転がり、尚も笑いを堪えながら答えた。
「安心しろ。何もしていない」
「へ?」
結衣は思わず、間抜けな声をもらす。ロイドは再びクスクス笑い始めた。
「気付かずに眠っていたと思っていたのか? いくらおまえが鈍くても、そんなわけないだろう。しかも、ニブイのは感情だけで、感度は良さそうだしな」
昨日くすぐられた時の事を言っているようだが、なんだか小馬鹿にされたような気がして、結衣は益々ムッとして叫んだ。
「からかったのね? もう! なんで裸なのよ、まぎらわしいったら!」
「おまえの体温が高いのが悪い。暑かったんだ」
「だったら離れて寝ればいいじゃない。だいたい何もしないって言ったら、普通、一緒に寝たりしないでしょ?」
今度はロイドがムッとした表情で、当然とばかりに言い返した。
「そんな事誰が決めた。オレは何もしなくても女を抱いて寝るのが好きなんだ。せっかくオレのベッドで女が寝てるんだから、抱いて寝たっていいだろう」
あまりにもキッパリと言い切られて、結衣は返す言葉を見失う。
「……エロ学者」
やっとの思いで言い返すと、すかさず額を叩かれた。
「エロじゃない。嗜好の問題だ」