クランベールに行ってきます


「結局、幽霊っているの? いないの?」
「幽霊を確かに見たと言う者にとっては、確かに見たんだろう。だが、幽霊に限らず、全く同じものをオレに見る事ができない以上、いるともいないとも判断できない」
「はぁ……」

 なんだか煙に巻かれたような気がする。気を取り直して提案してみた。

「じゃあ、全く同じものが見えるようになる機械を作ったら? 直接脳に映像を送るとか」

 名案のような気がしたのに、ロイドはあっさり却下した。

「そんなものは永遠に作れないだろうな。脳に直接映像を送る事は可能だが、それを判断するのは脳だ。人から主観や感情がなくならない限り無理だな」

 あっさり却下されたのが、なんだか悔しいのでちょっとイヤミを言ってみた。

「ふーん。あなたにも作れない機械があるのね。エロエロマシーンならお手の物なんでしょうけど」

 するとロイドは涼しい顔で切り返した。

「エロエロマシーンなんか作った事も考えた事もない。オレは道具を使わない主義だ」
 結衣は思わずガックリと肩を落とす。
「いったい何の話よ」

 ロイドはニヤリと笑うと結衣の耳元で囁いた。

「知りたければ、今夜オレの部屋に来い」
「絶対、行かない!」

 茶を飲み終わったカップをロイドに突きつけると、結衣は出口に向かった。
 エロネタなんか振るんじゃなかったと、後悔しながら扉を開けようとした時、後ろでまたロイドのかみ殺したような笑い声が聞こえた。


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