クランベールに行ってきます


「おまえ、昨日からずっと電源入れっぱなしだろう。あいつは眠らないからな。おまえが眠っている間も、勝手にいろんな事を学習している。しゃべるようになったから、おまえの寝言を復唱するかもしれないぞ」

 おもしろそうに笑うロイドに、結衣は頭をかかえて叫んだ。

「そんなの、困る——っ!」
「だったら、夜は電源切っとけ」
「あ、今は切ってる」

 結衣は小鳥の電源を切って、外に出てきた理由をロイドに話した。

「夜景か。運がよければ、おもしろいものが見られるぞ」

 そう言ってロイドは手すりに縋ると、王宮の外に視線を移した。
 結衣もその横で、両手を手すりにかけて、眼下に広がるラフルールの街並みを眺めた。
 淡い光に彩られたラフルールの街は、さながらおとぎの国のようだ。だが、ロイドの言う”おもしろいもの”が何かはわからない。
 一生懸命捜していると、ロイドが指摘した。

「街の中じゃない。外だ」

 言われて結衣が街の外の暗闇に視線を移した時、ラフルールの南東にある、こんもりとした森から、天に向かって青白い光が放たれた。

「今の何?」

 結衣が興奮して尋ねると、ロイドは笑って答えた。

「運がよかったな。朝話した遺跡だ。時々ああやって光を放つ。昼間に光る事もあるが、夜の方がわかりやすいな。ちなみに今のは、オレが拾われた遺跡だ」
「え? そうなの? また光らないかな」

 結衣が再び遺跡の方を向くと、側でロイドが声を上げ笑った。

「一度光ったら、しばらくは光らない」
「しばらくって、どれくらい?」
「数時間か、長ければ数日だ」
「じゃあ、本当に運がよかったんだ。もっと、しっかり見とけばよかった」

 結衣は手すりに縋って項垂れると、ため息をついた。すると、隣でロイドがクスクス笑った。


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