月と夕焼け
「それじゃ、美乃梨さんで良いから。ね?」

「はい」

「ふふっ、佳奈ちゃん本当に可愛い」

「私なんて…。美乃梨さん、が羨ましいです」

「羨ましい?」


この時、佳奈ちゃんといっぱい話した。
話したことによって、私はあることに気が付くことになる。


「私は、何もないから」

「…佳奈ちゃん。私とお友だちになろう?メアド教えてよ」

「そんなの、無理です。ダメですよ」

「なんで?」

「私は、メイドです」


とても、とても切なそうに佳奈ちゃんはそう言った。
私まで悲しくなるくらいだ。


「私、人見知りしないの。この性格が好きよ」

「は、い?」


私はなんとなく、佳奈ちゃんを力いっぱい抱き締めた。
何故か、無性に佳奈ちゃんが愛しくなったから。


「佳奈ちゃん。ずっと友だちだからね」

「…ありがとうございます」


誰にも内緒、という約束をして私と佳奈ちゃんはメアドを交換する。

誰にも内緒。

もちろん、遥佳くんにも。
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