友恋。


そして、手が届くか届かないかの距離まで来て、


カナは足を止めた。


「ユキナ、今日はどうしたの?悩み事とか?」


「ううん」


「じゃあ…?」


「あのね、びっくりしないでね?」


「うん…?」


「あたし…私、カナが好きなんだ、誰よりも、世界中の誰よりも友達として片想いの相手として!」


「え…」


「だから…だから…付き合うって形じゃなくてもいい、恋人になってくださいっ…」


言った。

言いきった。

カナの瞳を
真っ直ぐに見つめて、
あたしの口から
自分の声で伝えられた。


「………」


カナは目を丸くしてる。


「……ねぇ、何か言って?」


「わた、わたし…」


「?」


「今…ちょっと嬉しい…」


「ほんと?」


「うん…いいよ、あたしユキナの事好きだもん、まだ友達としてだけど…」


「まだ?」


「わたし…ユキナの恋人になれるかな…」


「それはこっちのセリフじゃない?カナ」


「そう?」


「そう」


「ほんとに?」


「ほんと。」


すごく嬉しかった。涙が出そうで、それをこらえて笑ってた。

カナも笑ってる。

一緒に、笑ってる。


「ねぇ…」


「何?カナ」


「キス…して?」


今度はあたしが
目を丸くする番だった。


カナは悪戯っぽく笑って

「誓いのキス…ね」

なんて言う。


あざといなぁ、カナは…

「いいよ」

カナの綺麗な髪をかきあげてあたしは少し屈んでカナの唇にあたしの唇をそっと重ねた。


カナの唇は思ってたよりずっと柔らかくてカナの睫も思ってたよりずっと長くて綺麗で


まだまだ知らない


カナの事、たくさんあるって


初めてのキス
誓いのキスで
気づいたんだ。


とんでもなく長く感じた
数十秒の後、唇を離す。


でもなんだか
距離を作るのも嫌で
ぎゅっと抱き締める。


カナはあたしより細くて小さくてあたしの腕の中で


幸せそうに微笑んでた。


カナが幸せなら
あたしも幸せ。


その時、あたしは
心の底から幸せだったんだ


好きな人が幸せなら
それを分かち合える。


その事実は女の子同士でも
そうじゃなくても
変わらない事なんでしょう…



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