ブルーの住人 

(七)

しかし結局は、男は村を追い出されてしまいました。

修験者の威光は絶大であり、平家の落ち武者である男ではまったく分が悪かったのです。

「汝が名はなんとや!

正味の名を申せぃ!

しからば拙僧が、汝の正体を暴いてくれん!」

「いやいや、それは……」
と口ごもるばかりの男の代わりに、後家が叫びます。

「この人は、嵐で頭をやられてる。

昔のことは、まるで覚えてねえのさ!」

「笑止千万! 

そのような戯れ言で、拙僧をたぶらかせるとでも思うてか! 

喝! 『リンピョウトウシャカイザイゼツゼン』」と印を切りました。

と同時に、村人たちすべてが膝をつきました。

後家すらひざまずいたことは、男にとって思いもよらぬことでした。

「分かった、おなか。

わたしが身を引けば良いのだな。

災いがなくなるよう、わたしも祈っていよう。」

「あんた、あんた、あんた……」

しかしその後も、森に入り込んだ者の不幸は続きました。

新たな修験者が通りかかった折に、事の真相を突き止めてくれと頼みました。

昨夜死亡した男を診たその修験者は、これは崇りではなく何か良からぬ物を食したせいだと断じました。

で、その村特有の土着宗教が見直されたのです。

村に残る者たちに分け与えることなく、己たちだけで食したが為の事とされたのです。

人間の食に対する卑しさの恐ろしさを、村人たちは思い知らされました。

人間の食に対する性は貪欲で業が深く憎悪の根源であると言う教えが、村人たちに浸透したのです。

決して神々の崇りではなく、人間の為せる業のせいだと信じたのです。
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