ブルーの住人 

(九)

とうとう男は、平家の落ち武者であることを隠したまま、本当に村人の一員となりました。

そして代々に渡り、平家の軍資金とは言わずに、大切な預かり物として一子相伝としたのです。

「いつの日か、立派なお方がこの地に立ち寄られるだろう。

その日まで、何代後になろうとも預かり続けねばならぬ。

もしこれを破れば、きっと大きな災いがこの村を襲うことになる。

天罰が下るということぞ。」
と、伝えたというのです。

そして今、あの大地震が天罰として捉えられたのです。

老婆の家に代々伝わる預かり物が、実は平家の埋蔵金だとする噂が広まったが為の、天罰としての大地震だと皆が考えたのです。

となると、老婆がその在り処をどうするのかということが、村人たちの関心の的になりました。

老婆にはすでに身寄りがおらず、伝えるべき者が居ないのです。

齢、七十になろうかという老婆。

今では耳が遠く、目も覚束ない状態です。

更には痴呆の症状らしきものも出始めています。

先年に口の端にのった言葉に、村人皆が一喜一憂しています。

「誰ぞに伝えねばならんが……。

いっそ、皆で平等に分けてしまおうか。

はるか昔の言い伝えなど、守らねばならぬものかどうか……。」

ぼそぼそと何かを洩らしますが、中々聞き取れません。

埋蔵金の在り処を洩らしたかどうかも、判然としません。

< 9 / 12 >

この作品をシェア

pagetop