未熟な恋人
後悔再会未来


それほど広くない部屋の真ん中に、じっと座っている私の周りにはどんどん見知った顔が集まってくる。

華燭の典。

私の結婚式の為に、たくさんの人達が来てくれているはず。

招待状はかなりの数を発送したから、多分。

今朝早くからホテルに入って、メイクとウェディングドレスの着付けに右往左往していた私は、部屋の外の様子がどうなっているのか全くわからない。

暁と二人で選んだウェディングドレスを着たまま、皺にならないように気を付けて、時間がくるのを待ちながらお祝いに駆けつけてくれた人達に頭を下げている。

「伊織、おめでとう。本当に綺麗だよ」

「幸せになれよ」

控室に集まった友達に、次々とかけられるお祝いの言葉。

私の泣き顔を見て、もらい泣きしている顔ぶれは、私を心配し続けてくれた大切な人達。

高校生の頃の私と暁を知っているみんなに、『ありがとう』と返したいのに、涙が邪魔をして、上手に言葉が出ない。

ひくひくと嗚咽交じりに声を出そうとしても、単なる音にしかならない私に、みんなが優しく

「良かった、本当に良かった」

ほっとしたような声をかけてくれることに幸せを感じるけれど、それでもやっぱり。

私と暁が経てきた苦しくて甘えた日々を思い返すと、単純に、幸せだけに浸っていてもいいのかと俯いてしまう。

高校生だったあの頃に戻れるのなら、二度と周りの大切な人達を悲しませたり心配させたりするような身勝手な事はしないのに。

何度そう考えただろう。

そして、これから何度、そう考えるんだろう。
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