未熟な恋人

「ごめんね……」

お腹に手をあてて、そして空を見上げながら、何度もそう言ってきたこの何年かを経て、ようやく今日の日を迎える事ができた。

私と暁の縁が再び寄り添う事ができるまで、何度も絶望して傷ついて、周りの家族をも巻き込んで苦しんで。

この世の明るさを教えてあげる事が出来ないまま、天国に行ってしまった赤ちゃんの事を考えてると今でも涙が出る。

「泣きすぎだよ」

私の肩に手を置いた友達に、優しく声をかけられても、涙は止まらない。

暁と結婚できる嬉しさからの涙と、やっぱり思い出すと悲しくなる赤ちゃんへの悲しい涙が交じり合って、熱いものがこみあげてくる。

ウェディングドレスに幾つも光る真珠に落ちる涙を気にしながら、天井を向いて涙を止めようと頑張っていると。

「俺の伊織を泣かしてるのは、誰だよ」

控室を覗き込む暁の顔が見えた。

グレーのタキシードを着ている長身は、男前度も数段アップしていた。

今日初めて見る愛しい人の顔に、再び嗚咽が漏れる。

やっぱり、大好きだと実感して、そして幸せだなと実感して、顔が歪む。

「ちょっと、まだ花嫁に会ったらだめでしょ、出ていきなさい」

友達みんなで暁を追い出そうとするけれど、暁はそんな事構わないとでもいうようにさっさと私の側に来た。
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