勿論のこと、檻の中に入るのは始めてであった。
 
静寂で薄暗く、ここに入れられるということは自分が普通の人間扱いをされていないことを象徴するようであった。

 さすがに、警察署に行って自首した時は警察官も驚きを隠せない様子であった。それもそのはずである。自分たちが血まなこにになって探している犯罪者が自ら警察署を尋ねてきたのだから。
 
事情聴取も一通り終わり、俺は慣れないことにすっかり疲れきり壁に寄りかかりながら目を瞑っていた。

 これから俺の人生どうなるのだろう。

きっと罪を償って社会に出ても、一般企業にはもう就職は難しいだろう。
 
しかし、もうしてしまったことを悔やんでも仕方がない。今の俺にできることはただ、自分のしてしまった罪を逃げずに認め償う事だけである。

それにしても一体、俺の夢の中にどうして横山誠という男が出てきたのだろう。
俺に対しての恨みか、それとも何かのメッセージか。はたまた予知夢の反対で過去を変えようとしていたのか。

もしあの男の身体で俺が飲み会の会場に行った時の俺を見つけ、俺を止めていれば、今ごろ俺も犯罪者ではなく、普通の学生として生活を送れているだろうし、横山誠も死ななくて済んだのか。
 
生きている時も身体も違うが、不思議と夢と夢の中で結ばれていた二人。
だがそれは互いに助け合うことなく、ただ両者のこの数日間の生い立ちをただ受動的に見ていただけだった。
 
この二人に起こった現象を人は何と言うのだろうか。

あれを夢というものと片付けていいのだろうか。何かが違う何かが・・・・・・。

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