雨あがりの空に

拓海の涙

翠が入院をし始めて、すぐのことだった。

拓海は、いつもこう言う。

「…パパ、ママは?」

…拓海のこの発言にいつも俺は、言葉をつまらせる。

何て言えばいいのか分からないんだ…。


「…ママは、病院だよ」

「…どうして?ママ、元気になったのに……また病院に行かないといけないの?」


拓海の瞳は、とても純粋だった。

この世界の汚れを知らない。

この世界の残酷さを知らない。


自分の母親の真実を知らない。


ただ、がむしゃらに生きている普通の男の子なんだ。


それなのに…。

それなのに…。


この先、拓海に悲しみを与え続けてしまうと思う。

俺は、翠にも拓海にも何もしてやれない。

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