雨あがりの空に
先生は、俺がずっと握っていた、翠の手首をそっと奪うと…手を当てて時計を確認した。



「……残念ですが…午前7時32分…ご臨終です…」




何で?


翠の手は、まだこんなにも温かいのに……。


まだ、確かな温もりが…ここにあるんだ。


俺が握っているこの手は、凄く温かいんだ…。



病室の外では、七恵さんが静かに泣いていた。





翠は、もう一生…目を開けることはなかった。







もう一生……。



翠は旅立った。この雨あがりの青空に……。


< 86 / 112 >

この作品をシェア

pagetop