魅惑の香り【密フェチ】
「…………好き」
「……え?」
「あっ……いえ、あのっ」
思わず口に出してしまい、どうしようかと狭い車内でアタフタする。
電車は主要な駅に着いたらしく多くの人が降りて行き、車内は幾分か空いたようだった。
私は主任から身体を離して彼の顔をそっと覗き見た。
「好きって、嘘? 本当?」
主任は私の真意を確かめるように、熱い視線を向けてきた。
こんなところで告白なんてするつもりなかったのに。でも、嘘だと言いたくない。
「ほ、本当です」
「信じるよ?」
「……はい」
私を見つめる彼は、魅惑的な香りを放つ耳裏から首筋までを赤く染めている。
「次の駅で降りないか? 俺の家があるんだ」
これ以上、その香りを吸いこんだらどうなってしまうか。
私は半ば酩酊する意識の中、彼の言葉にコクリと頷いた。
【fin】