雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
『……いま、そなたの記憶に触れた。十六夜が冥蘖と融合したのか、それで魂が暴走して……そなたの養い親まで。……やはりもう、限界なのかもしれないな』

「須佐乃袁……様?」

『月夜……というのか。そなた、魂の片割れはどうした?』

「片割れ……?」

 須佐乃袁の手が、月夜の胸に伸びた。
 そこだけがはっきりと視覚化される。

『いつからか、人間はわたしたちを二つに区別した。神と魔……しかし本来わたしたちはどちらも同じ存在。どちらも欠けてはありえない存在。光があれば闇があり、表があれば裏がある。ただそれが資質の違いというだけのこと』

「イシャナも……云っていた。神と魔に違いはないと……」

 紫の瞳が瞬いた。

『イシャナの一族も、わたしの闇を受け継いでいるがゆえに、只人には制御できない力が彼らを魔物に変えてしまう……』

「イシャナを! 彼を救うことはできない……だろうか?」

 月夜は、自分があまりに自然と須佐乃袁に接していることに、今さらながらに気づいた。

『……一度、劣化した魂を蘇らせるのは困難だ。生まれて間もない魂があれば、あるいは……だがそのためには契りを交わす必要がある』

 ドキリとした。
 契りとは契約のこと。
 雪と交わした交わりの記憶が蘇る。
 まさかまた、同じことをしろと云うのか?

「あの……契りというのが、ボクにはよく……」

『多くの場合、契りとは相手の魂を身の内に受け入れ、交わったそれを相手に還す。そうすることで、魂の欠損を補い、また癒すことができる。新たな力を得ることも……』

「癒す……それでボクは助かったのか?」

『しかしそれも別の云い方をすれば、相手の魂を還さず乗っ取ることができるということ。ゆえに契りを交わすことは信頼のおける者としかしない』


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