雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜
 月夜と須佐乃袁は、どこまでも白く続く空間を浮遊していた。

「ここは……もしや暁天宮?」

『確かに、そなたはいま、わたしの近くにいる。しかしここはわたしの無意識の更に奥底……わたし自身にも、意識できない場所。そなたがここまで降りてこられたのは、朱雀の魂が導いたからだろう』

「朱雀帝の……ボクは本当に、神から生まれたのか?」

 両手を目の前にかざす。
 手とは云っても、実体ではないそれはぼんやりと輪郭が薄く、そこにあるという感覚がなければ、簡単に見失ってしまう程度の存在だ。
 そんな不確かな残像に、須佐乃袁の白磁の手が重なる。
 不思議なことに、触れた部分が輪郭を現す。

『魂が共鳴している。只人の魂なら、わたしに融合するだけ。それが、神と呼ばれる者と人間の違いだ』

「融合?……では、十六夜が術に失敗したのは――」

『十六夜とは、最後の帝の子だな……もう一人、冥蘖と共に人間から……いや、妃の身に降りたわたしから生まれた子』

「妃の身に降りた……?」

 はじめて訊く後宮事情 に、月夜は目を丸くする。

『この1000季でガルナに生まれた帝は12。すべてわたしの魂をその身に降ろした人間に産ませた。そうすることで、人間でありながら強い神の力を間接的に扱える帝が誕生する。帝の存在が、わたしの隠れ蓑となる。わたしは暁天宮の奥で、あとはひたすら眠るだけだ……次の帝が必要になるその刻まで』

「ガルナを加護していたのは、あなたの力を操る帝だったのか……」

『ゆえに、帝を宿した者の寿命は儚く、帝自身は長命。胎内で、無意識に魂の融合が起こるからだ』

「禁忌……あれは、必然なことだと……だったらなぜ止められなかったんだ? なにか止める方法が――」

 須佐乃袁はまぶたを伏せた。


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