卓上彼氏


そう呟いた瞬間に、何かが許された気がした。




緊張の糸が一気にほどけ、熱い思いが身体の中から込み上げた。



それが涙となって、ぽつり、ぽつりと零れていく。





私、藤堂くんが好きなんだ。



知らず知らずのうちに、恋してたんだ。




自分の中でその想いが確信に変わったこの瞬間、胸がキュッとしたような気がした。




いつから、なんて分からない。ただ、私が藤堂くんのことを好きだという事実は変わらなかった。





−−−−−−−ヨク…。



藤堂くんの顏に続いて、ヨクの顔が脳裏に浮かんだ。





私は、未だかつて無い罪悪感に苛まれた。




ヨクはあんなに私を愛してくれているのに……。


これじゃ、浮気みたいなものだ。




私は、ヨクに冷めたわけでも嫌いになったわけでもなかった。



もちろん、今までのヨクへの感情が勘違いだったとも思わない。



確かにあれは恋愛感情だった。





つまり私は今、同時に二人の男性に恋をしているというわけだ。





そんなことってホントにあるの?とか、人間として最低だな、とか思われても仕方ない。




事実、そうなのだから。




私にはどちらかを選ぶことなんて今はできなかった。頭が混乱して、冷静な判断をできそうにない。





どうしたらいいの?私、どうしたら…………。




ただ無言で泣き続ける私を、ヨクは隣でそっと見守っていてくれた。



< 213 / 221 >

この作品をシェア

pagetop