星王子の幸せレッスン
「これは…本当に…やばいかもしれない」



そう呟いても、後の祭りだ。



もうかれこれ5時間は歩いている。あたりは薄暗く、日が暮れはじめている。



誰にも行き先を話していないことが致命的だった。



私がこうして遭難していることは、誰も知らないから、救助がくるはずもない。



それでも誰かが私を見つけ、助けてくれることを祈った。



このまま誰にも知られずに死んでしまうなんて、悲しすぎる。



「29歳独身無職女性、遭難で死亡」という新聞の見出しが頭をよぎり、頭をぶんぶんとふった。



まだ死ねない。私はまだ運命の王子に出会っていない。


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