砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 必死になって文字を目で追う。

 だから、毬はしばらくの間気づかなかったのだ。

 屋敷の周りで、沢山の猫が集まって来ていることに。



 ミャアオウ、ニャアオウ、ガラガラ、ゴロゴロ。 

 その鳴き声に我に返って、部屋から出た時には、まるで都中の猫を集めたような、ものすごい数の猫が、屋敷の周りを囲んでいた。

「……うっそ」

 毬は動揺のあまり言葉を無くす。
 一匹の猫は可愛いが、何千と集団で居る猫には恐怖を覚えた。

 もちろん、五体満足な猫ばかりではない。

 片足のない猫。
 片目のない猫。
 しっぽのちぎれた猫。
 今にも死に掛けている猫。
 腹の大きな猫。
 生まれたばかりの子猫。
 外猫もいれば、内猫もいる。
 三毛猫に、黒猫、白猫、茶色い猫に雑多な色が混ざった猫。
 唐猫に、……もしや、あれは化け猫?!。

 ありとあらゆる猫が、
 毬を取り囲んでいた。

 風が、獣臭さを孕んでいる。

「……どうしよう」

 思いがけないほどの猫に取り囲まれて、毬はひどく動揺した。
 緊張のあまり、大量の汗が頬を伝い、手のひらを湿らせる。



 だって、部屋の中で呟いたのに。
 どうして。

 でも、なんとかしなきゃ。

 毬は必死に呼吸を整え、もう一度さきほどの本をひっくり返した。



『猫を返すときの誦』を、探さなきゃ……。



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