砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 外は夕暮れ時で、橙色に染まる空は幻想的なほど美しかった。

 歩きながら、龍星は言う。

「雅之、反応があからさま過ぎて面白いぞ」

 既に気持ちを切り替えたのか、楽しそうに龍星は言う。

「面白くないね。
 よりにもよって、毬姫のことを鬼呼ばわりなんて。

 最低だ」

 雅之の方は苛立ちを微塵も隠そうとしない。

「左大臣には義理があるんじゃなかったか?」

「義理がなかったら、突き倒してる」

 冗談を微塵も感じさせない真直ぐな瞳で雅之が言った。

「そうか。

 やはり、あんなタヌキに義理なんてなければよかったな」

 言った龍星の口元からは、完全に笑みが消えていた。

 しばし、無言で歩いた後、雅之が唇を開く。

「今から、どうするんだ?」

「もちろん、姫には我が家で寝ていてもらうさ。

 なに、今の時期は花の精たちが良く働く。

 そこらへんの女房よりは、よっぽど腕はいい」


< 47 / 463 >

この作品をシェア

pagetop