砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 タヌキのところに彼女を置いておきたくなかったから、とか
 あの屋敷がまだ危険かもしれないから、とか
 目を覚ましたときの彼女の記憶のなくし具合が気になるから、とか



 理由をつけようと思えば、いくらでもつけれる気がした。



 でも、そういう言葉で片付くことが、本当の理由だとは思えなかった。

 もっと、別の。
 今まで目にしたこともないような、胸の奥から勝手に湧き上がってくる切なさを帯びた甘ったるい感情。

 名前すらつけられないような、その感情から出た、良く分からない行動でしかない。

……とは言えず、龍星は足を進める。





 雅之も、何も聞かない。





 きっと、こういうことを言葉にするのを、野暮というのだろうな……

 などと、考えながらおそらく初めて恋に落ちたのであろう親友の陰陽師の半歩後ろを歩いていた。



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