砂糖菓子より甘い恋【加筆修正ver】
 龍星がパンっと手を打つ。

 その音が合図だったようで、雅之が笛を吹くのを辞めた。
 耳鳴りがしそうなほどしんとする、左大臣家の屋敷。

 いつの間にか、あたりは闇に包まれていた。

 前もって、家の者たちは全て別の場所へと移動させていた。
 今、龍星たちがいる所だけは封印しているので、音ややりとりが外に漏れることもない。

 娘の問題を外に漏らしたくない左大臣も、喜んで同意してくれていた。
 むしろ、率先して協力してくれていると言っても良い。

 この話を通したとき、腹黒いというのもなかなか役立つものだな、と、龍星は雅之に囁き、雅之の眉を潜めさせたものだった。

「……龍星、これは」

 畳の下に眠る白骨化した遺体を目の当たりにし、雅之が問う。

「これは、とある哀しい恋の物語の結末だよ。

 彼と、この屋敷の桜の下に住む彼女を、別の河川敷の桜の下へと移してやろうではないか。

 恋物語はそれからだ、夜は長い」

 いうと、パンっと、もう一度龍星が手を叩く。

 そうすると、部屋の外から人とも物怪(もののけ)とも影ともつかぬ何がしか達がぬっと入ってきた。

 それらは龍星に丁寧に頭を下げると、雅之が声をあげる暇もないくらい、あっという間に骸を持ち去った。

「畳を元に戻してくれぬか?」

 もはや、力仕事は自分の仕事ではないといわんばかりに涼しい顔で龍星が言う。

 雅之はきつねにつままれた顔で畳を戻し、何食わぬ顔で左大臣に全てが終わったことを告げた龍星とともに、安倍邸へと向かった。

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